会長ご挨拶

「価格転嫁のための奇策」


  一般社団法人東北コンクリート製品協会 会長  前田 直之

 

 

 東北コンクリート製品協会が発足して十年目の節目を迎えます。「オール東北」を標榜して活動してまいりました当協会は、おかげさまで正会員43社・団体会員5団体(準会員24社)・賛助会員13社の計80社の会員を擁するまでに成長いたしました。これもひとえに関係各位の熱心なご指導と多大なるご協力のおかげと心から感謝申し上げます。

 さて、昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻によって当業界も大きな影響を受けました。川上であるセメント産業における石炭のロシア産のシェアは、我が国全体が1割程度なのに対して、メーカーによっては6~7割と聞き及んでおります。代替の調達先からスポットで購入するため、価格が4倍とも5倍とも言われ、メーカー各社の収益を大きく圧迫しています。そのため、昨年のトン当たり約2千円に続いて、さらに3千円の値上げの要請が各社から来ている状況であります。さらに追い打ちをかけるように燃料や電気料金の高騰、人手不足による人件費の上昇など、原価が上がる要素はあっても、下がる要素が見つからないのが現状です。様々な製品・商品で価格転嫁の動きが活発でありますが、当業界においても同様に価格転嫁をお願いしなければならない状況ですが、どこか一か所にしわ寄せがいく形ではなく、サプライチェーン全体で薄く広く負担する形にしなければならないと考えております。

 そこで、是非とも提言したいことがあります。我々業界の最終ユーザーは民間よりも官庁による発注の方が主流であります。一部、国交省の直轄案件等は、資材価格の高騰に対して物価スライドを柔軟に取り入れていただいておりますが、県・市町村レベルでは、申請の煩雑さも相まって、なかなか進んでおりません。設計単価についても、両調査会の資料に基づいて機械的に設定しているのが実情ではないでしょうか。両調査会にも業界として陳情には行きますが、「実勢価格が上がったら掲載価格も上げます」という表現はなかなか変わりません。公共事業を落札された建設会社に設計単価以上の価格提示をすることは困難を極めます。これでは価格転嫁が進むはずがありません。

 それを打開するには、以前、佐藤信秋先生らがご尽力されて実現した設計労務単価のアップのように、政治的な判断で各自治体の長が「諸資材の設計単価を調査価格から一律数%上げる」という英断をしていただきたいと思います。ただし、そのアップ分をどこかが独占するのではなく、元請、下請、各資材メーカー、商社や運送業者などに行き渡っているか、いわゆるトリクルダウンが起こっているかの検証も必要かと思います。

 人口減少に悩む自治体にとって、住民の生命・財産を守る建設関連産業をしっかりと育成して、物価上昇に苦しむ人々の生活を少しでも楽にするための施策を打つことで、住民の満足度を上げることは長い目で見た人口減少対策でもあり、その地域に住みたいと思う人を増やす効果もあると思います。多少、過激な申し上げ方ではありますが、製品業界だけでなく、建設関連産業全体、ひいては地域のためにそのような一手を打つ、そのような一年になって欲しいと切に願いつつ、年度はじめにあたっての所感といたします。